養豚場や酪農場などの畜産現場では、日々大量の排水が発生します。その多くは家畜のふん尿や洗浄水に由来しており、油分や有機物、窒素、リンを多く含むのが特徴です。さらに、季節や飼育頭数によって排水の量や成分が大きく変動するため、安定した処理が難しいという課題があります。

特に問題となるのは高濃度の有機物と窒素・リンです。これらは河川や地下水に流出すると富栄養化の原因となり、藻類の異常繁殖や水質悪化を招きます。また、ふん尿由来の強い臭気も近隣環境への影響が大きく、社会的な対応が求められるケースも少なくありません。

さらに、排水を処理する過程で発生する汚泥の含水率が高いことも大きな課題です。水分が多い汚泥は運搬や処分のコストがかさみ、施設の経済的な負担となります。加えて、処理設備にかかる電力や燃料などのランニングコストも無視できません。

このように、畜産現場の排水処理は「環境負荷の低減」「臭気対策」「処理コストの削減」という三つの課題が常に求められています。効率的な処理技術や自然由来の資材を組み合わせることで、これらの問題を解決し、持続可能な畜産経営を実現することが可能です。